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イラスト:相良ゆあ

その赤い髪の少女は、海岸の砂浜で目を覚ました。

少女「……あれ…あたしは…なんでこんな所に…。あいたた、頭がいてえ…」
少女は辺りを見渡した。人の手が入ってない、綺麗な砂浜だった。夕日が目にまぶしい。
少女「…あたしは何をして……?思い出せない。あたしは、何なんだ!?」
メリッサ「あれ?あなた、どこから来たの?」
少女は、後ろから声をかけられた。振り返ると、自分と同じくらいの少女が居た。三角帽子にホウキを持っていて、まるで童話に出てくるような魔法使いの格好をしている。

少女「…ふふっ、あんた、面白い格好してんな。そういう趣味なのか?」
メリッサ「面白いとは失礼ですの!これはこの村の由緒ある正装なの。…あたしはメリッサ。あなた、名前は何ていうの?」
少女「あたしの名前は……ファイス、ファイスだ!名前は覚えてる!」
メリッサ「覚えてるって…どういうことなの?」
ファイス「あたしは…名前以外の記憶が無いんだ。なぜここにいるかも、何でこんなことになったのかもわからないんだ…」
メリッサ「それは大変ですの!とりあえず、近くの村まで行きますの。長老が、どうにかしてくれるかもしれないの」
ファイス「そうだな…、悪いが、世話になる。あたしはどうしたらいいかさっぱりわからないんだ…」
メリッサ「それじゃ一緒に行きますの。ちょっと歩くけど、我慢するの」
ファイス「あんた、そのホウキに乗って、ピューっと飛んでくことはできないのか?」
メリッサ「うっ…こ、このホウキはただの魔法の触媒で、飛ぶとかそういうのとは関係ないですの!…でもあなた、そういう知識は覚えているの?」
ファイス「ああ、なんか一般常識は覚えているみたいだ、助かった。あたしはこれでも常識人なんだぜ」
ファイス「常識はあっても礼儀に欠けてるかもしれないの。それじゃ行きますの。この先にある、ニシディアという村なの」

ファイスとメリッサは、島の中央にある村にたどり着いた。メリッサは、その村の中央にある、古い屋敷に入っていった。
メリッサ「長老!ちょうろーう!ちょっと用があるですの!」
マトリン「なんじゃメリッサ!長老でなく、学長と呼べと言っておろう、ここは大学なんじゃぞ!」
メリッサ「そんなのどうでもいいですの。それより、この子が記憶喪失みたいですの。ちょっと診てあげて欲しいの」
マトリン「記憶喪失〜?わしゃ、医者でもないし………む、そ、その子か?…こ、これは…」
ファイス「な、なんだよ、あたし、そんなに悪いのか?別に体の具合は悪くねーぞ」
マトリン「うーむ…おい、ミンク!ミンクはおるか!」
ミンク「なんでしょう、学長。何か御用ですか」
マトリン「この子なんだが…白魔道士として、お前、どう見る」
ミンク「どうって……こ、これは!?わ、私より、神聖魔法に長けてる神父様をお呼びすべきでは」
マトリン「やはりお前もそう見るか…じゃあ神父を呼んできてくれ」
ファイス「おいおい、なんか不安になってきたよ」

ファイスはその日、夜遅くまでマトリン、ミンク、神父から質問を受けた。しかし記憶が無いため、どの質問にも答えることはできなかった
ファイス「あーだから、覚えてねえっての。もう勘弁してくれ、眠くなってきたよ」
マトリン「やむをえん、それでは村の離れにある空き家を使ってくれ。狭いが一人でなら何とかなるだろう」
ファイス「わりいな、助かるよ。んじゃな、おやすみ」
ファイスは屋敷を出て、空き家の方に去っていった。

メリッサ「結局何もわからなかったですの。村の賢者が三人も揃って、ファイスの記憶を戻すことも出来ないの?」
マトリン「メリッサ…お前、何も感じないのか?…うーむ、暗黒魔法を極めたお前だから、同属性により、あの子に惹かれているのか…」
メリッサ「どういうことなの?はっきり言って欲しいですの」
神父「あの子は…悪魔に魅入られている。それも、悪魔の中でも最も忌まわしい、古代の最悪の悪魔に…ああ口にするのも畏れ多い!主よ、どうか許したまえ」
メリッサ「古代の最悪の悪魔!?なんか、ピンとこない呼び名ですの」
マトリン「本来の名前はあるのじゃ。しかし、その名を口にしたら大きな災いがあると伝えられていて、そう呼ばれるようになった」
ミンク「あの子は、その悪魔の禁呪により、記憶を奪われているんです。とても私たちの手に負える相手ではありませんよ」
マトリン「うむ……やはり、この村から出て行ってもらうしかないな…」
メリッサ「!!だめですの!そんなことは、メリッサの名にかけて、許さないですの!」
マトリン「お前は…。お前にこの村の開祖・メリッサ様の名を許したのはわしであるぞ。わしらでも、あの子がもたらすかも知れぬ災いを抑える保障ができんのだ。分かれ、メリッサ」
メリッサ「この名を受継いだ時の教えを忘れてはないですの!『魔法で人を幸せにし、魔法で人を救う』それが初代メリッサ様が遺した言葉ですの!魔法使いの村ニシディアの民が、禁呪が手に負えないからといって見捨てたら、この世でファイスを救える人はいないですの!」
マトリン「すまんメリッサ、わしらにはどうすることもできん。禁忌は隔離し、被害を最小に抑えるしかないのじゃ…」
メリッサ「…わかったの。じゃあ、あたしがファイスと一緒にこの村を出るの。そして、ファイスを助ける方法を探すの」
マトリン「そ、それは……わかった。好きにするが良い。それも修行になるだろう…」
メリッサ「話は決まったの。じゃあ、明日朝一で村を出るの。今まで世話になったわ、なの」

メリッサは屋敷から出た。すると、黒い影がメリッサの前に立ちはだかった。
メリッサ「キャッ!だ、誰なの…、あ、あなたは確か」

かげぞう「この村に世話になっている忍の者だ。…先ほどのやり取りが、聞こえてしまってな」
メリッサ「どうだか?聞こえたのか、聴いてたのか、なの。で、何か用ですの?」
かげぞう「そなた…人のために、なぜそこまでする?何の見返りもないのだろう」
メリッサ「見返りなんかどうでもいいの!これは…村のためでもファイスのためだけでもなく、自分のためですの。正しいと思う魔法使いの道を貫き通したいから、やるですの」
かげぞう「自分のため、か…拙者の仲間の女シノビも、これが己のためと言って人助けをしていたな…いずれ、会わせたいものだ。いや、失礼つかまつった。いつかまた会ったら力になろう。さらばだ」
メリッサ「さよならですの。あたしは自分のやりたいようにやるだけですの」

そして夜が明けた。
メリッサ「おきろーファイス!さっさと出発するの!」
ファイス「出発!?どういうことだよおい、何がどうなってやがんだ」
メリッサ「えっと…この村ではどうすることもできないから、あなたを治す方法を探しに行くの!」
ファイス「それって…ふっ、そうかい。ま、得体の知れないあたしなんかが居たら困るよな、いいよ、すぐ出てくよ」
メリッサ「勘違いしないで、あたしも一緒に行くの!あたしは前から村を出たかったから、ちょうど良かったの」
ファイス「へえ、そいつはありがてえ。旅は道連れか…よろしくな」
メリッサ「それじゃレッツラゴーなの!」
ファイスとメリッサは、村を出て、船着場に辿り着いた。
メリッサ「このボートに乗って、東を目指すの。東にはいろいろな街があるから、きっと何か見つかると思うの」
ファイス「ボートねえ、地味な旅だな…ホウキにのってピューと移動できねえのかよ。魔法でワープとかさ…」
メリッサ「だからホウキで空を飛ぶとか出来ないの!あたしの魔法は悪い敵をやっつける技なの。そのうち披露してあげるの」
ファイス「へえ、是非お目にかかりたいものだね。あたしも記憶は無いけど、結構戦える気がするぜ」
ファイス「おしゃべりしてないで、さっさとボートを漕ぎ出すの!変わりばんこで漕ぐのよ!」
こうして、ファイスとメリッサの旅がはじまったのであった。

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